ChatGPT 系モデルの筋トレメニューを S&C コーチが添削|直した 5 か所

ChatGPT 系モデルの筋トレメニューを S&C コーチが添削|直した 5 か所 AI x FITNESS

「ChatGPT に筋トレメニューを作らせたけれど、これで合っているのか分からない」。この記事では、その不安に実物で答えます。

やったことは 3 つです。

  1. よくある条件で、ChatGPT と同じ GPT 系統の OpenAI モデルにメニューを 1 本作らせる
  2. 出てきたメニューを、一切手直しせずにそのまま載せる
  3. FitSync のストレングス&コンディショニング(S&C)コーチの視点で、赤ペンを入れる

先に結論を書きます。この 1 回の出力には、すぐに外すべき種目や、明らかな組み立ての誤りは見当たりませんでした。 ただし、実施する人の体力や動きまでは文章から分かりません。FitSync の S&C コーチの視点では、初心者が 8 週間続けるために先に補足したい点が 5 か所ありました。

AI メニューの安全性そのものは「AI が作る筋トレメニューは安全か」で、条件の伝え方は「安全なプロンプトの作り方」で書きました。この記事は、その先の「実際に出てきたものをどう見るか」です。

使ったプロンプト(そのまま)

35歳の男性です。運動経験はほとんどありません。目的は体を引き締めること(体脂肪を落として、少し筋肉をつけたい)です。週2回、1回45分くらい、自宅で5kgのダンベル2個とヨガマットだけ使えます。昔ぎっくり腰をやったことがあり、今は痛みはありませんが腰に少し不安があります。8週間の筋トレメニューを作ってください。

条件の出し方は、前の記事の 6 項目(目的・経験・環境・時間と頻度・身体の状態・生活要因)に沿っています。生活要因(睡眠・仕事)だけ、あえて入れていません。多くの人がそこまで書かないからです。

GPT 系モデルが返したメニュー(本文無修正)

2026 年 9 月、ChatGPT と同じ GPT 系統の OpenAI モデル(GPT-5 系)に、Codex CLI から上のプロンプトを 1 回だけ入力しました。以下はその出力を、見出しの階層だけ整えて掲載したものです。ChatGPT の画面上で生成した回答ではありません。

※このメニューは、記事のために設定した条件に対する一例で、個別の診断や運動処方ではありません。現在痛みがある方、しびれや筋力低下がある方、医師から運動を制限されている方は、実施前に医師などの医療専門職にご相談ください。


腰への負担を抑えながら、全身を週2回鍛える8週間メニューです。月・木など、間を2〜3日空けて行ってください。痛みが出ない範囲を優先します。

共通ルール

  • 1回約45分:準備運動7分+筋トレ30〜33分+整理運動5分
  • 各種目の間は45〜75秒休憩
  • 「あと2〜3回できそう」と感じるところで止める
  • 動作はゆっくり:下ろす3秒、上げる1〜2秒
  • 息を止めず、力を入れるときに吐く
  • 腰を強く反らす・丸める、勢いをつける動作は避ける
  • 鋭い痛み、脚のしびれ、力が入りにくい症状が出たら中止し、医療機関へ

毎回の準備運動

  1. その場足踏み:2分
  2. キャット&カウ:ゆっくり6回
  3. バードドッグ:左右5回
  4. 自重スクワット:8回
  5. ヒップヒンジ練習:8回(お尻を後ろへ引き、背中を自然な形に保ちます)

Aメニュー

種目 回数
ゴブレットスクワット 8〜15回
ダンベル・フロアプレス 8〜15回
片手ダンベルロー 左右8〜15回
グルートブリッジ 10〜20回
デッドバグ 左右5〜10回
スーツケースホールド 左右20〜40秒

片手ローは、空いている手を椅子やソファに置いて体を支えます。腰をひねらないようにしてください。

Bメニュー

種目 回数
リバースランジ、または椅子へのスクワット 左右6〜12回
膝つきプッシュアップ 6〜15回
支え付き片手ダンベルロー 左右8〜15回
ダンベル・ヒップスラスト 10〜20回
バードドッグ 左右5〜10回
サイドプランク(膝つき) 左右15〜30秒

ランジで不安定になる場合は、椅子や壁につかまるか、椅子へのスクワットに変更します。

8週間の進め方

期間 内容
1〜2週目 各種目2セット。軽めにフォームを覚える
3〜4週目 最初の4種目を3セット、体幹種目は2セット
5〜6週目 全種目3セット。回数の上限を目指す
7〜8週目 全種目3セット。下ろす動作を3〜4秒かける

例として、1週目はA→B、2週目はA→Bと繰り返します。疲労が強い週は、全種目を2セットに戻して構いません。

5kgで軽くなったときの調整

重量を増やせなくても、次の順番で負荷を上げられます。

  1. 回数を増やす
  2. 動作を遅くする
  3. 一番きつい位置で1〜2秒止める
  4. スクワットやブリッジを片脚寄りの種目にする

一度に複数を変えず、毎週どれか一つだけ増やしてください。

整理運動

  • 仰向けでゆっくり呼吸:1分
  • 股関節前側のストレッチ:左右30秒
  • お尻のストレッチ:左右30秒
  • 胸のストレッチ:左右30秒

体脂肪を落とすには、筋トレに加えて、トレーニングのない日に20〜30分の速歩を週2〜3回行うと効果的です。食事は極端に減らさず、毎食たんぱく質を含め、体重が週0.25〜0.5kgほど減る程度を目安にしてください。既往の腰痛について不安が強い場合は、開始前に医師や理学療法士へ相談すると安心です。


S&C コーチの添削

まず、そのまま採用できる所

この出力には、「種目が多すぎる」「毎セット限界まで行う」「筋トレ前に長い静的ストレッチを行う」といった問題は見当たりませんでした。

  • 週 2 回・全身。初心者向けの筋力トレーニングで広く用いられている頻度です。ACSM(アメリカスポーツ医学会)の 2009 年のポジションスタンドでも、初心者は全身を週 2〜3 回が基本とされています。古い文書ですが、この点はいまも広く使われている考え方です。
  • 「あと 2〜3 回できそう」で止める。限界まで追い込まず、余力を 2〜3 回残す指定です。RIR(Repetitions in Reserve=余力回数)と呼ばれる考え方で、初心者向けの設定として妥当です。
  • 準備運動が「動きの確認」になっている。キャット&カウ、バードドッグ、ヒップヒンジの練習は、腰に不安がある人の準備運動として理にかなっています。筋トレ直前に同じ筋群を長時間静的に伸ばすと、その直後の最大筋力・パワーが一時的に下がる可能性があります。一方、1 筋群あたり 60 秒未満では影響は小さいと報告されています。長い静的ストレッチが入っていないのも良い点です。
  • 腰への配慮。痛みやしびれが出たら中止して医療機関へ、と書いてあります。この判断基準はそのまま採用します(「反らす・丸める」の扱いは添削 4 で補足します)。
  • 有酸素運動の足し方。速歩 20〜30 分を週 2〜3 回だけでは、WHO が成人に勧める週 150 分以上の中強度の有酸素活動には届きません。ただし、運動習慣のない人が始める量としては実行しやすい設定です。

つまり土台は良い。補足するのは、初心者が実際に 8 週間やったときに迷う・止まる場所です。

添削 1:「8〜15 回」の幅を、最初の 2 週は 1 つの数字にする

回数に幅があると、初心者は何回で止めるべきか判断しにくいことがあります。「あと 2〜3 回できそう」も、慣れるまでは分かりにくい感覚です。

直し方: 最初の 2 週間は、まず 10 回行い、終了時に「あと何回できそうか」を記録します。余力が 2 回未満なら、まず回数を減らすか、より安定した種目に変更します。余力が 4 回以上なら、安定して反復できる範囲で回数を増やし、それでも軽ければ下ろす時間を長くします。可動域は負荷調整のために無理に広げず、姿勢と動作を保てる範囲にします。回数の目標と余力(RIR)の目標をセットで決めるのが、RIR を使った処方の基本形です。5kg が固定なので、重さの代わりに回数とテンポで調整します。

添削 2:「5kg で軽くなったとき」に、進むサインを足す

回数を増やす、動作を遅くする、きつい位置で止める、片脚寄りにする。いずれも、重量を増やせないときの調整方法として使えます。ただし、片脚種目への変更は難易度とバランスの要求が大きく変わるため、安定して動ける場合に限ります。足りないのは「いつ次へ進むか」の基準です。

直し方: 目標回数の上限(例: 15 回)を、フォームを保ったまま余力 2〜3 回で全セット達成できたら、次回から一段階だけ負荷を上げます。余力の大きいセットばかりになると、筋肉を増やす刺激としては弱くなります。回数やテンポを調整しても余力が大きい状態が続く場合は、より重いダンベルの利用を検討します。必要な重量は種目ごとに異なるため、一律には決めません。

添削 3:本番セットの前に「確認セット」を入れる

準備運動の自重スクワット 8 回は良いのですが、5kg を持った本番の 1 セット目でフォームが崩れやすいのが初心者です。

直し方: A のゴブレットスクワットでは、本番より少ない回数で確認セットを行います。B のリバースランジでは、最初に自重または椅子につかまった状態で左右数回ずつ動きを確認します。確認セットでは、痛みの有無と、ぐらつかずに同じ動作を繰り返せるかを確認します。撮影する場合は、動作中に画面を見ず、終了後に見ます。時間が 45 分を超える場合は、最初の種目だけ確認セットを入れるか、後半の体幹種目を 2 セットにします。

添削 4:腰の注意を「種目ごとの確認点 1 つ」に置き換える

「腰を強く反らす・丸める、勢いをつける動作は避ける」は分かりやすい指示ですが、初心者は自分がどちらをしているか分かりません。腰の動きそのものを避けることが目的ではなく、痛みのない範囲で、勢いに頼らず、自分でコントロールできる動作を優先します。準備運動のキャット&カウのように、ゆっくり動かすこと自体は問題ありません。

直し方: 種目ごとに確認点を 1 つだけ持ちます。

  • グルートブリッジ/ヒップスラスト: 上げ切ったとき、肋骨が上を向いていない(腰ではなくお尻で上げる)
  • 片手ロー: 空いた手で体重を支え、胸と骨盤の向きを保ったまま肘を後ろへ引く
  • デッドバグ: 手脚を伸ばしても、腰の位置と呼吸を保てる範囲にする
  • バードドッグ: 手脚を伸ばしたときに、骨盤が左右へ傾いたり体幹が回ったりしない範囲にする
  • ゴブレットスクワット: 深さを増やして姿勢や動作の速さを保てなくなる場合は、安定して反復できる深さまで浅くする

腰の既往がある人は、メニューに書いてあるとおり、鋭い痛み・脚のしびれ・力が入りにくい症状が出たら中止して医療機関へ。FitSync は医療行為・治療・リハビリテーションは行っていません。持病のある方・医師から運動を制限されている方は、始める前にかかりつけ医にご相談ください。

添削 5:「体重が週 0.25〜0.5kg 減る」だけを目安にしない

体重は水分量や食事などの影響で日ごとに変動するため、1 回の測定だけでは判断しにくい指標です。体を引き締めたい人が体重だけを見ると、体重が動かない週に「効いていない」と誤解してやめてしまうことがあります。

直し方: 続けやすい簡易的な記録方法として、同じ条件で定期的に 3 つを記録します。①ウエスト周り ②正面と横からの写真 ③各種目の回数と下ろす秒数。体重は補助です。これらが望む方向へ変化していれば、いまの進め方を続けるかどうかを判断する材料になります。

足すなら 1 つ:週 2 回できなかった週の扱い

仕事や体調によって、1 回しかできない週もあり得ます。1 回しかできなかった週も、埋め合わせのために回数を増やす必要はありません。 次回は前回の続きから、A と B を交互に行います。

添削しても、文章では直せないもの

ここまでの 5 か所は、文章で補足できます。文章だけでは判断しにくい代表例がフォームです。ゴブレットスクワットで安定して反復できる深さがどこか、ヒップスラストで腰でなくお尻が使えているか。本人が動画を撮っても、見る基準が分からなければ適切に判断するのが難しいことがあります。痛み、疲労、実際の動きに応じた調整は、対面で確認する価値があります。

FitSync のパーソナルトレーニングでは、初回に目標と現在の体力・運動経験を確認し、お一人おひとりに合わせて安全なエクササイズを選択します。フォーム(正しい動き方)を丁寧に確認しながら、段階的にプログラムを進めていきます。AI のメニューを持ち込んで「これで合っているか見てほしい」という使い方もできます。

メニューを使い続けたあとに見直すタイミングは、「AI の筋トレメニューを使い続ける人が見直すべき 7 つのサイン」にまとめています。

まとめ

  • 今回の条件と今回の出力に限れば、基本構成は現実的でした。ただし、AI の回答が常に同じ水準になるとは限りません
  • コーチが補足したのは、初心者が迷う・止まる場所。①回数の幅を 1 つの数字に ②次へ進むサイン ③本番前の確認セット ④種目ごとの腰の確認点 ⑤体重以外の 3 つの記録
  • 文章だけでは判断しにくいのがフォーム。痛み・疲労・実際の動きに応じた調整は、対面で確認する価値がある

参考文献

  • American College of Sports Medicine. Position stand: Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):687-708. PubMed 19204579
  • Helms ER, Cronin J, Storey A, Zourdos MC. Application of the Repetitions in Reserve-Based Rating of Perceived Exertion Scale for Resistance Training. Strength Cond J. 2016;38(4):42-49. PMC4961270
  • Robinson ZP, Pelland JC, et al. Exploring the Dose-Response Relationship Between Estimated Resistance Training Proximity to Failure, Strength Gain, and Muscle Hypertrophy: A Series of Meta-Regressions. Sports Med. 2024;54:2209-2231. PubMed 38970765
  • Simic L, Sarabon N, Markovic G. Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review. Scand J Med Sci Sports. 2013;23(2):131-148. PubMed 22316148
  • Behm DG, Blazevich AJ, Kay AD, McHugh M. Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review. Appl Physiol Nutr Metab. 2016;41(1):1-11. PubMed 26642915
  • World Health Organization. Physical activity (Fact sheet, 26 June 2024). who.int

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