AIの「研究によると」は本物か|出典の誤りを測った研究と、PubMedで確かめる手順

AIの「研究によると」は本物か|出典の誤りを測った研究と、PubMedで確かめる手順 AI x FITNESS

ChatGPT や Gemini に筋トレや食事のことを聞くと、「〇〇らの研究(2021 年)によると」と、論文を挙げて答えてくれることがあります。根拠が付いていると安心できますが、その論文は本当にあるのでしょうか。

「AI が作る筋トレメニューは安全か」では、AI が挙げる根拠の論文は鵜呑みにせず、一次情報で確かめるようおすすめしました。今回は、その「確かめ方」を具体的に書きます。あわせて、AI が挙げる出典の正確さを測った 2023〜2026 年の研究を整理します。

先に結論を書きます。

  • AI が挙げる論文には、存在しない論文や、題名・著者・番号の違う論文が混ざることがあります。今回取り上げた研究では、存在しない論文の割合は、数% から 5 割を超えるものまで大きく違いました(AI の世代・機能・分野・聞き方・数え方がそれぞれ違うためです)
  • 新しい版や機能で減った例はありますが、「新しい AI なら安心」とは言えません。2026 年の研究でも、当時の新しい世代を含む AI で、存在しない(一部を含む)論文が 2〜3 割近く出た例があります
  • 論文が実在しても、AI の説明と中身が合っているとは限りません
  • 確かめ方は、論文の題名を PubMed に貼り、題名・著者・年を照らし、要旨で中身を照らし、撤回などの印を見ることです。慣れれば短い時間でできます

本記事は 2026 年 10 月時点で確認した研究と、各社の公式ヘルプに基づきます。AI は更新が速く、研究で調べられたのは発表時点より前の版です。いまお使いの AI の正確さが同じとは限りません。本記事は一般的な情報で、医療上の助言ではありません。

研究で分かったこと——AI が挙げる出典の正確さ

AI に論文を挙げさせ、1 本ずつ実在と書誌(題名・著者・雑誌名・番号など)を確かめた研究を並べます。

研究 調べた AI と条件 結果
Walters・Wilder(2023 年) ChatGPT(GPT-3.5・GPT-4)に 42 のテーマで短い文献レビューを書かせた(参考文献 636 本) 存在しない論文は GPT-3.5 で 55%、GPT-4 で 18%。実在する論文でも、書誌に実質的な誤りが GPT-3.5 で 43%、GPT-4 で 24%
Linardon ら(2025 年) GPT-4o(2025 年 6 月)に、心の健康の 3 つのテーマで文献レビューを 6 本書かせた(176 本) 存在しない論文は 19.9%。実在した 141 本のうち 45.4% に誤りがあり、いちばん多かったのは DOI(論文の識別番号)の誤り。よく知られていないテーマほど、存在しない論文が多かった
Bernstein ら(2026 年) ChatGPT-5(2025 年 12 月版)に、整形外科の診療ガイドラインをもとにした 350 の質問(2,736 本) 存在しない(または PubMed に載っていない)論文は 7.13%。書誌がすべて正しかったのは 49.34%。1 回の質問で出た文献が全部正しかったのは 8.00%
Seifi・Seyfi(2026 年) 当時の新しい世代を含む 3 つの AI(2026 年 3 月・検索機能なし)に、神経の集中治療の 10 テーマで 10 本ずつ(300 本) 何らかの誤りを含むものが 55.0%、まったく存在しない論文が 28.3%。AI によって大きな差があった
Nieves-Lopez ら(2026 年) 3 つの AI に、足と足首の外科の試験問題 192 問 3 つとも存在しない(一部を含む)参考文献を出した。正答率がいちばん高かった AI が、その割合もいちばん高く 22.9%
Şengül ら(2026 年) 2 つの AI を、Deep Research(多くの資料を調べてまとめる機能)ありとなしで比べた。整形外科(膝の前十字靱帯・肩の腱板)の 46 問 引用の健全性(内容との関係・書誌の正確さ・実在・出典の質)は、なしで 64.6〜96.8%、ありで 98.6〜100%

数字の幅が大きいのは、調べた AI の世代、機能、分野、質問の仕方、数え方がそれぞれ違うためです。ですから「AI の出典の半分はうそ」とまとめることはできません。一方で、2026 年の研究でも、存在しない論文はゼロにはなっていません。

また、表の研究の多くは、専門家向けの質問で測っています。脊椎の外科の質問を、医師向けと患者向けの言い方で聞き比べた研究(McLaughlin ら、2026 年)では、一般向けの AI はどれも患者向けの言い方のほうが成績が悪く、ある AI では存在しない論文が 2.1% から 20.0% に増えました。ふだんの言葉で聞くと、表の数字より悪く出ることもあるということです。

運動・栄養に近い分野では

運動・栄養に近い分野の研究もあります。ただし、出典が実在するかを数えた研究ではなく、答えや出典の質を見た研究です。

  • 誤った答えに誘導しやすい質問での監査(Tiller ら、2026 年):2025 年 2 月に、ChatGPT 3.5 などの無料版 5 つへ、がん・栄養・運動能力など 5 分野の 50 問をそれぞれ投げました。回答の 49.6% に問題があり、分野別では栄養と運動能力がもっとも弱い結果でした。参考文献を求めた質問では、文献の完全さ(著者・年・題名・雑誌名・リンクの正しさ)が中央値で 40% で、完全に正確な文献リストを出せたチャットボットはありませんでした。ただし、誤りを引き出すように作った質問での結果で、著者らも、ふだんの使い方より問題の割合が高く出うると書いています
  • 運動生理学の総説を AI に書かせた研究(Morrone ら、2026 年):Deep Research を使える状態の AI に、運動生理学のテーマ(片側を鍛えると反対側も強くなる現象の仕組み)の総説を書かせ、その分野の専門家 4 人が査読しました。専門家たちは、参考文献をいちばんの問題に挙げました(不正確で、無料で読める論文に偏っていた)
  • 検索つき AI でも、出典の質は別の問題(Liu ら、2025 年):ウェブ検索つきの AI(Microsoft Copilot)に、サプリメントの効果について日本語で 180 問を、3 つの回答モードで聞いた研究です。引用 3,081 件のうち 72.7% は、ブログ・販売サイト・SNS など、検証されていない情報源でした。540 の回答のうち 10% では、少なくとも 1 つの引用先に、AI の主張が書かれていませんでした
  • 運動メニューそのもの(He ら、2026 年):AI に運動の計画を作らせた研究を集めた系統的レビュー(同じテーマの研究を集めて調べる方法・24 研究)では、14 研究で安全上の問題が報告されていました(研究の数の割合で、回答の割合ではありません)。メニューの中身の確かめ方は「AI が作る筋トレメニューは安全か」で整理しています

運動・栄養の質問への答えについて、最新の検索つき AI の出典が実在するかを数で測った研究は、今回は見つかりませんでした。

「新しい AI なら安心」とは言えない理由

研究からは、出典の誤りは減った例はあるが、なくなってはいないと言えます。

  • 減った例:同じ研究の中で比べると、GPT-3.5 から GPT-4 で存在しない論文は 55% から 18% に減りました(Walters ら)。Deep Research を使うと、引用の健全性がほぼ 100% になった研究もあります(Şengül ら・整形外科の 46 問)
  • なくなってはいない:2026 年 3 月に検索機能なしで調べた研究では、当時の新しい世代を含む 3 つの AI で存在しない論文が 28.3% ありました(Seifi ら)。2026 年の別の研究でも、3 つの AI すべてが存在しない(一部を含む)参考文献を出しました(Nieves-Lopez ら)。Deep Research を使った運動生理学の総説でも、参考文献がいちばんの問題とされました(Morrone ら)

AI を作っている会社自身も、確かめることを求めています。

  • OpenAI:ChatGPT の公式ヘルプで、誤りの例として「存在しない研究・引用・出典」を挙げ、重要な情報は信頼できる情報源で確かめるよう勧めています。ChatGPT は「最終的な情報源ではなく、下書きとして」使うように、とも書いています
  • Google:Gemini のヘルプで、Gemini は誤った情報を事実のように示すことがある、としています
  • Anthropic:Claude のヘルプで、Claude を唯一の情報源として頼らないこと、ウェブ検索の結果を使うときは Claude が示した出典を確かめることを求めています

AI が誤りを起こす仕組みは「AI パーソナルトレーナーは 2026 年どこまで使えるか」で扱っています。

PubMed で確かめる手順

PubMed(パブメド)は、米国国立医学図書館が運営する、医学・生命科学の論文の無料のデータベースです。運動や栄養の論文の多くもここで探せます。

  1. AI に、論文の題名・著者・年・雑誌名を出してもらう。PMID(PubMed の論文番号)か DOI があれば、それも出してもらいます
  2. 題名を PubMed の検索窓に貼る。PubMed の公式ヘルプによると、題名や、著者・雑誌名・年をそのまま入れると、一部の語が間違っていても最も近い論文を探す仕組みがあります
  3. 出てきた論文の題名・著者・年・雑誌名が、AI の言ったものと合うかを見る。最も近い「別の論文」が出ることもあるので、題名だけでなく著者・年・雑誌名まで照らします。合わないところがあれば、その出典は根拠に使いません。PMID や DOI だけで探した場合も、必ず題名を照らします。研究では、AI の出典の誤りは PMID や DOI に多く見られました(Bernstein ら・Linardon ら)
  4. DOI は「https://doi.org/」の後ろに付けて開く。論文の掲載ページに移動します。PubMed で DOI を検索するときは、DOI を引用符(”)で囲み、「doi.org/」は付けません(PubMed の公式ヘルプ)
  5. 要旨(Abstract)を開いて、AI の説明と照らし合わせる。見るところは、対象(人か動物か、どんな人か)、何と比べたか、数字、結論の向きです。論文が実在しても、AI の説明と中身が合っていないことがあります
  6. 撤回や訂正の印を見る。PubMed では、撤回された論文に「Retracted Publication(撤回された論文)」という種類が付き、撤回の通知(Retraction in)へのリンクが載ります。訂正(Erratum in)や懸念の表明(Expression of concern in)へのリンクが付くこともあります。撤回の情報を集めた Retraction Watch のデータベースは、2023 年 9 月に Crossref が取得し、公開しています
  7. PubMed で見つからないときは、題名を引用符で囲んで Google Scholar で探す。ただし Google Scholar は、すべての文献を収録しているとは限らない、と公式ヘルプに書かれています。また、「[citation](引用)」とだけ表示される結果は、ほかの論文が挙げているだけで本体が見つかっていないものなので、実在の確認にはなりません(同じヘルプ)。逆に、どこを探しても見つからない論文は、根拠として使わないのが安全です

なお、PubMed に載っていることは、その論文が存在することの確認にはなりますが、中身が正しいことの保証ではありません。手順 5・6 で中身と印を見るのはそのためです。

この記事で引用した論文は、PubMed の記録(要旨。一部は公開されている本文)で、題名・著者・数字を確かめています。書く途中では、別の論文が引用していた数字の原典が PubMed で見つからなかったり、研究が「誤りを引き出すように作った質問」という条件つきだったりしたため、使わなかった数字や書き方を変えた数字がありました。

AI に聞くときの工夫

ここからは、研究とヘルプの内容を踏まえた、この記事としての整理です。

  • 出典は「題名・著者・年・雑誌名・PMID か DOI」をセットで出してもらう。照らし合わせる材料が増えます
  • 検索の機能を使い、リンク先を自分で開く。OpenAI のヘルプには、ChatGPT の検索などの機能は一般に既定で使える状態になっている(使える機能はプランによって違う)とあります。そのうえで、正確さが大事なときは検索や deep research を使い、リンクを直接開いて確かめるよう勧めています。検索つきでも出典の質や中身が合わない例があるので、開いて確かめるところまでが手順です
  • 一般の言葉で聞いたときほど、確かめる。専門家向けの聞き方より成績が悪くなった研究があります
  • 運動・栄養のように、弱いと報告された分野ほど確かめる
  • 体の痛み・持病・薬に関わることは、AI の答えで判断せず、医療機関に相談する

スマートウォッチの数字をどこまで信じてよいかは、「スマートウォッチの数字はどこまで信じてよいか」で研究をもとに整理しています。

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まとめ

  • AI が挙げる論文には、存在しない論文や書誌の誤りが混ざることがある。割合は AI の世代・機能・分野・聞き方で大きく変わる
  • 新しい版や Deep Research で減った例はあるが、2026 年の研究でもゼロにはなっていない
  • 論文が実在しても、AI の説明と中身が合うとは限らない。PubMed に載っていることも、中身の保証ではない
  • 題名を PubMed に貼る → 題名・著者・年・雑誌名を照らす → 要旨で中身を照らす → 撤回や訂正の印を見る

本記事は一般的な情報で、医療上の助言ではありません。体調に不安がある方は、医療機関にご相談ください。

参考文献

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  • Bernstein EM, Bol B, Shanaa J, et al. Evaluating the Citation Accuracy of ChatGPT-5 Using the American Academy of Orthopaedic Surgeons Clinical Practice Guidelines. Cureus. 2026;18(7):e113654. PubMed 42668804
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  • OpenAI. Does ChatGPT tell the truth?
  • Google. Learn about responses from Gemini Apps
  • Anthropic. Claude is providing incorrect or misleading responses. What’s going on?

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