スマートウォッチを着けてトレーニングをすると、心拍数・歩数・消費カロリー・睡眠時間まで、毎日たくさんの数字が表示されます。では、その数字はどこまで正確なのでしょうか。
「ChatGPT で食事管理はどこまで当てになるか」では、AI が食事の写真から栄養を推定する精度を取り上げました。今回は、スマートウォッチや活動量計など、身につける市販の機器(ウェアラブル)が測る数字です。こうした機器は、光で血流の変化を読むセンサーや、動きを読む加速度センサーの信号から、計算(アルゴリズム)で数字を推定しています。
2024〜2026 年に発表された総説・メタ解析と研究をもとに整理しました。
先に結論を書きます。
- 心拍数は、比較的当たります。平均のずれは小さい一方、1 回ごとの測定には幅があり、運動の種類などでも変わります
- 歩数は、おおむね使えます。ただし少なめに出ることが多く、条件によっては 10% 前後ずれます
- 消費カロリーは、ずれが大きく、向きもそろわない数字です。Apple Watch の研究をまとめた最新の論文では、研究ごとのばらつきが大きすぎて、数字をまとめることができませんでした
- 睡眠時間は、睡眠検査と比べて差があります。健康な成人の研究では、長めに出やすい傾向でした。大まかな傾向を追うには使えますが、正確な時間を測るものではありません
つまり、心拍と歩数は目安として使いやすく、消費カロリーと睡眠は「傾向を見る数字」として扱うのが、研究から言えることです。
本記事は 2026 年 10 月時点で確認した研究に基づきます。研究は発表までに時間がかかるため、調べられた機種は数年前のものが中心です。スマートウォッチは機種やソフトウェアの更新が速く、いまお使いの機種の精度が同じとは限りません。本記事は一般的な情報で、医療上の助言ではありません。
研究で分かったこと——数字ごとの当たりやすさ
身につける機器の精度を調べた研究をまとめた論文の結果を、数字ごとに並べます。
| 数字 | 何と比べたか | 結果 | 使いやすさ |
|---|---|---|---|
| 心拍数 | 心電図や胸に巻く心拍計など、基準となる測定 | 手首に着ける機器の誤差はおよそ ±3%(Doherty ら)。Apple Watch では平均のずれ −0.27 拍/分、1 回ごとのずれの幅はおよそ ±7 拍/分(Lambe ら) | 目安として使いやすい |
| 歩数 | 基準となる測定 | 少なめに出ることが多く、誤差は −9〜12% の範囲(Doherty ら)。Apple Watch では精度は中程度(Lambe ら) | おおむね使える |
| 消費カロリー | 呼気ガスの分析(間接熱量測定)など、基準となる測定 | 研究ごとのずれは −21%〜+15% と幅が大きい(Doherty ら)。Apple Watch では、ずれは大きいことが多く、研究ごと・研究の中でも一貫しない(Lambe ら) | 傾向を見る数字 |
| 睡眠 | 睡眠検査(ポリソムノグラフィー) | 健康な成人では、総睡眠時間と睡眠効率を長めに、途中で目覚めていた時間を短めに見積もりやすく、機種による差が大きい(Agostinho ら) | 傾向を見る数字 |
心拍数——比較的当たる
Doherty らは、市販のウェアラブルの精度を調べた系統的レビュー 24 本をまとめた総説(アンブレラレビュー、2024 年)で、手首に着ける機器の心拍数の誤差をおよそ ±3% とまとめています。ただし、肌の色などの使う人の特徴、運動の強さ、運動の種類によって変わるとしています。
Apple Watch については、研究をまとめたメタ解析が 2 本あります。より新しい Lambe ら(2026 年・82 研究・2025 年 9 月までの研究)では、心拍数の平均のずれは −0.27 拍/分とわずかに少なめで、1 回ごとの測定のずれの幅(一致限界)は −7.19〜+6.64 拍/分でした。Choe・Kang(2025 年・56 研究)でも平均のずれは −0.12 拍/分で、誤差の目安 10% を超えた条件はありませんでした。
筋トレ中は事情が少し変わります。健康な成人男性 62 人が 4 機種を着けて持久運動と筋トレを行った 2026 年の研究では、心拍数はどの機種もおおむね正確でしたが、筋トレ中は 4 機種のうち 3 機種で心電図との間に有意な差が出ました。ただし差が出た機種でも、1 回ごとのずれの幅はおよそ ±10 拍/分で、著者らは筋トレ中も心拍数はおおむね正確だと結論しています(1 研究の結果です)。
歩数——使えるが、少なめに出やすい
Doherty らは、歩数は少なめに出ることが多く、誤差は −9〜12% の範囲とまとめています。Apple Watch では、Lambe らが歩数の精度を「中程度」、Choe・Kang は条件によって誤差の目安 10%(この論文が「正確」とみなす基準)を超えたとしています。
なお、同じ総説では、運動の強さ別の時間(軽い・中くらい・きつい運動をそれぞれ何分したか)の判定は、研究用の加速度計と比べて誤差が大きく、一部の機器では平均の誤差が 29〜80% でした。調べられた当時の機器では、歩数より当てにしにくい数字だったということです。
消費カロリー——ずれが大きく、向きもそろわない
消費カロリーは、研究ごとのずれの大きさと向きがそろわない数字です。
- Doherty らの総説:Fitbit の機器を中心に調べたレビューでは、消費カロリーを 1 分あたり約 3 kcal(約 3%)少なめに見積もり、1 回ごとのずれの幅は −13〜+7 kcal/分でした。より多くの機器を含むメタ解析でも少なめに出る傾向で、元の研究ごとのずれは −21.27%〜+14.76% と大きな幅がありました。ただし、特定の機器を除くと基準との差が有意でなくなる(一部の機器はかなり正確だった)分析もありました。それでもこのメタ解析の著者らは、推定がずれる可能性が大きいとして、十分に正確と言える機器はないと慎重な見方を示しています
- Apple Watch(Lambe ら・2026 年):消費カロリーのずれは、運動中も安静時も大きいことが多く、研究ごと・研究の中でも大きくばらついたため、数字をまとめる解析ができませんでした。調べた 8 研究のうち 5 研究は、Series 2 以前の古い機種でした。2025 年の Choe・Kang のメタ解析でも、消費カロリーはどの条件でも誤差の目安 10% を超えていました
- 筋トレ中:先ほどの 2026 年の研究(成人男性 62 人)では、消費カロリーは持久運動中でも少なめに見積もられ、筋トレ中はさらにずれが大きくなりました
- 人によっても変わる:ヒスパニック系の成人 58 人が 10 分間自転車をこいだ 2026 年の 1 研究では、4 機種のうち 3 機種で有意なずれがあり、どの機種でも体脂肪率が高い人ほど誤差が大きくなりました
ずれの向きも、Doherty らの総説や筋トレ中の研究では少なめ、Choe・Kang の Apple Watch のメタ解析では平均でわずかに多め(+0.30 kcal/分)と、研究によって違います。共通しているのは、ずれの幅が大きく、1 日の合計にすると無視できない差になりうることです。
睡眠——大まかな傾向を見るもの
Doherty らは、身につける機器は総睡眠時間を長めに見積もる傾向があり、誤差はおおむね 10% を超えるとまとめています。
健康な成人を対象に、身につける睡眠計と睡眠検査を同時に比べた研究のメタ解析(Agostinho ら、2026 年)でも、機器は総睡眠時間と睡眠効率(寝床にいた時間のうち、実際に眠っていた割合)を長めに、途中で目覚めていた時間を短めに見積もりやすく、機種による差が大きいという結果でした。いつも他より優れていた機種はありませんでした。著者らは、全体的な睡眠の目安や長い期間の記録には役立ちうる一方、単独で診断や睡眠の段階を詳しく判定する用途には限界があるとしています。
手首に着ける睡眠計の研究 24 本をまとめた別のメタ解析(Lee ら、2025 年・健康な成人と病気のある方を含む)では、全機種をまとめると、総睡眠時間・睡眠効率・寝つくまでの時間・途中で目覚めていた時間のいずれも、睡眠検査との間に差がありました(機種別に見ると、差が有意でない項目もありました。差の向きは、研究や機種によって一致しません)。
睡眠中の心拍変動(HRV)や回復の指標については「AI ウェアラブルと回復モニタリング(HRV)」で整理しています。
そもそも、検証が追いついていない
Doherty らが、2003 年以降に発売された 20 社の機器 310 種類を数えたところ、総説に含まれた研究で少なくとも 1 つの数字を検証されていたのは 34 種類(約 11%)でした。1 台が 5 つの数字(歩数・心拍数・睡眠・活動量・消費カロリー)を測ると仮定すると、必要な検証のうち実際に行われたのは 3.5% にとどまるとしています。
また著者らは、研究は発表までに時間がかかるため、この総説の結果は、検索を行った時点(2024 年 6 月)からおよそ 2 年前の機器の姿を写したものだとしています。研究で調べられた機種やソフトウェアの精度が、いまお使いの機種に当てはまるとは限りません。この記事の数字も、「この種類の数字はずれやすい」という傾向として読んでください。
なお、心電図や不整脈の通知のような、医療に関わる機能はこの記事では扱いません。体調に不安がある場合は、機器の表示で判断せず、医療機関にご相談ください。
トレーニングをしている人の使い方
ここからは、研究の結果を踏まえた、この記事としての整理です(研究が直接この使い方を示したわけではありません)。
- 心拍数:運動の強さの目安に使いやすい。1 回の数字より、同じ運動での数字の動き方を見る(筋トレ中は機種によって差が出た研究もある)
- 歩数:日々の活動量の目安に使える。少なめに出ることがある前提で
- 消費カロリー:誤差が大きいので、食事の量の計算にそのまま使わない。同じ機器での傾向を見る
- 睡眠:1 晩の数字で判断しない。長い期間の流れを見る
- どの数字も、機種を替えたら前の機種の数字とは比べない(機種ごとに精度が違うため)
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まとめ
- 心拍数は比較的当たる。ただし 1 回ごとの測定には幅があり、筋トレ中は機種によって差が出た研究もある
- 歩数はおおむね使えるが、少なめに出ることが多い
- 消費カロリーはずれが大きく、向きも機器や研究でそろわない。食事の計算にそのまま使わない
- 睡眠は睡眠検査と差があり、健康な成人では長めに出やすい。長い期間の傾向を見るのに使う
- 研究で調べられた機器は数年前のものが中心で、検証もまだ一部にとどまる。研究の数字は傾向として読む
本記事は一般的な情報で、医療上の助言ではありません。体調に不安がある方は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- Doherty C, Baldwin M, Keogh A, Caulfield B, Argent R. Keeping Pace with Wearables: A Living Umbrella Review of Systematic Reviews Evaluating the Accuracy of Consumer Wearable Technologies in Health Measurement. Sports Med. 2024;54(11):2907-2926. PubMed 39080098
- Lambe R, Baldwin M, O’Grady B, Schumann M, Caulfield B, Doherty C. The accuracy of Apple Watch measurements: a living systematic review and meta-analysis. NPJ Digit Med. 2026;9(1):63. PubMed 41513748
- Choe JP, Kang M. Apple watch accuracy in monitoring health metrics: a systematic review and meta-analysis. Physiol Meas. 2025;46(4). PubMed 40199339
- Agostinho M, Borges M, Pereira T, Borges DF, Soares JI. Are Wearable Sleep-Tracking Devices Reliable Alternatives to Polysomnography? A Systematic Review and Meta-Analysis. Behav Sleep Med. 2026 (online ahead of print). PubMed 42175611
- Lee YJ, Lee JY, Cho JH, Kang YJ, Choi JH. Performance of consumer wrist-worn sleep tracking devices compared to polysomnography: a meta-analysis. J Clin Sleep Med. 2025;21(3):573-582. PubMed 39484805
- Lee TH, Jun DU, Bae JY, Roh HT, Cho SY. Comparative Validity of Smartwatch-Derived Heart Rate and Energy Expenditure During Endurance and Resistance Exercise. Sensors (Basel). 2026;26(8):2526. PubMed 42076635
- Kostrna J, Oparina E, Palacios C, et al. Body fat, skin tone, and the accuracy of smartwatch caloric expenditure estimates. PLoS One. 2026;21(7):e0353261. PubMed 42525581

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