「柔道は柔道の練習で強くなるもので、筋トレはいらない」という声もあれば、「筋力がないと投げられない」という声もあります。では、研究ではどこまで分かっているのでしょうか。
この記事では、柔道選手の体力を調べた総説と、柔道を含む格闘技の選手に筋力トレーニングを行った研究(系統的レビュー・メタ解析・介入研究)をもとに整理します。系統的レビューは同じテーマの研究を集めて調べる方法、メタ解析はそれらの結果をまとめて計算し直す方法です。
先に結論を書きます。
- 筋力は、柔道の競技レベルと関係しています。ただし、どのレベルの差かで話が変わります。趣味の選手とエリート選手の差には下半身の筋力が関わると考えられる一方、代表を争うレベルの選手どうしでは差が出にくい、という総説があります
- 筋力トレーニングで、筋力・パワー・バランスは伸びます。柔道を含む格闘技の選手の研究をまとめた系統的レビューで、そう報告されています(ただし、筋力は増えてもパワーは増えなかった研究もあります)
- 筋トレで試合の成績や技の出来が変わるかを確かめた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。柔道に特有の体力テストが伸びたという小規模な試験はあります
- 筋トレで柔道のケガが減るかは、柔道ではまだ確かめられていません。柔道向けのケガ予防のウォームアップを試した試験では、ケガの割合に偶然とは言いにくい差(有意な差)は出ていません
本記事は 2026 年 10 月時点で確認した研究に基づきます。運動の研究は更新されることがあります。本記事は一般的な情報で、医療上の助言ではありません。成長期の方は指導者と、持病のある方・医師から運動を制限されている方はかかりつけ医と相談のうえで取り組んでください。
柔道選手の体力——筋力はどこまで関係するか
エリート柔道選手の体力を整理した総説(Franchini ら、2011 年)は、次のようにまとめています。
- エリート選手は、エリートでない選手より上半身の無酸素性のパワーが高い
- 下半身の筋力(動きの中で出す筋力)は、エリート選手と趣味の選手を分けると考えられる。ただし、代表の座を争う高いレベルの選手どうしでは差が出ていない
- 最大の等尺性筋力(関節を動かさずに出す力)は、柔道選手の間で差をつける要素ではなかった
2026 年には、全国・国際レベルの柔道選手 112 人(男子 68 人・女子 44 人)の最大筋力(スクワット・ベンチプレス・ロウ)を測った研究も出ています(Campos ら)。国際レベルの選手は国内レベルの選手より、持ち上げられる重さそのものは大きかった一方で、体重あたりの筋力には有意な差がありませんでした。男子では重い階級ほど筋力が大きく、女子では階級による差は見られませんでした。
つまり、筋力は柔道の土台の 1 つですが、上のレベルになるほど、筋力だけで競技レベルの差を説明できるわけではない、というのが研究から読めることです。どちらも選手を比べた研究で、筋トレをしたから強くなったかどうかを調べたものではありません。
筋トレをすると何が伸びるか
筋力トレーニングの効果を調べた研究を中心に、関連する研究をまとめます。
| 研究 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| Cid-Calfucura ら(2023 年・系統的レビュー) | 五輪の格闘技(柔道・ボクシング・空手・レスリング・フェンシング)の選手。20 研究・504 人 | 最大筋力・パワー・柔軟性・バランスが有意に向上。柔道などの競技の動作でも、トレーニングをした群が有利だった |
| Ojeda-Aravena ら(2023 年・メタ解析) | 柔道を含む 6 つの格闘技の選手。12 研究・292 人(多くは 18 歳未満の男子) | ジャンプ系のトレーニング(プライオメトリクス)で、最大筋力・跳躍・方向転換・競技の動作が小〜中程度向上(確からしさは低〜中) |
| Nakatani ら(2024 年) | 男子柔道選手 23 人。柔道の練習に、片腕のダンベルカールを 6 週間(週 2 回)追加 | 筋肉の厚さと筋力は増えたが、パワー(素早く力を出す能力)は増えなかった |
| Stanković ら(2024 年) | 若い柔道選手 18 人(平均 13.2 歳)。ベンチプレスとスクワットを 12 週間 | 安定した床でも不安定な台の上でも、最大筋力が向上。腹筋の力は不安定な台の群が上回った |
| Branco ら(2022 年・無作為化比較試験) | 18 歳未満の柔道選手 21 人(最後まで測れたのは各群 8 人)。柔道の練習に筋力トレーニングを週 3 回・8 週間足した群と、練習だけの群 | 足した群で、ベンチプレスなどの最大筋力と、柔道に特有の体力テスト(SJFT)の成績が向上。体重は変わらなかった |
| Chen ら(2026 年・無作為化比較試験) | 若い男子柔道選手 24 人。パワー系の筋トレと短いダッシュの繰り返しを 6 週間(週 3 回)。通常の練習を続けた群と比較 | 跳躍・短距離走・柔道に特有の体力テスト(SJFT)などが向上。比較の群は変化なし |
| Marotta ら(2026 年・系統的レビュー) | 柔道選手の体幹トレーニング。7 研究 | 強い体幹はバランスと動きの制御を高める可能性がある(国際レベルの選手は背中側の体幹の筋力が大きかった=こちらはトレーニングの効果ではなく選手の比較) |
格闘技全体で見ると、筋力トレーニングで体力が伸びることは、複数の研究でそろっています。ただし、柔道選手だけを対象にした研究は少人数のものが中心です。Nakatani らの研究では、肘を曲げる 1 つの動作で筋力は増えたものの、パワーは増えませんでした。1 つの運動・6 週間の結果なので、柔道全体のパワーに当てはめることはできません。
なお、柔道選手 42 人と S&C コーチ 9 人に聞いた調査(Weldon ら、2024 年)では、筋力トレーニングやコンディショニング(S&C)が乱取り(自由に組み合って投げ合う練習)にとって「とても重要」と答えた人が 78〜88% いました。これは考え方を聞いた調査で、効果を確かめたものではありません。S&C の考え方そのものは「ストレングス&コンディショニング(S&C)とは」で整理しています。
「練習だけで十分」「筋トレはしない」は正しいか
ここは、研究ではまだ答えが出ていない部分です。
- 筋トレを足すと試合の成績や技の出来がどう変わるかを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。近いものとしては、上の Branco らの試験(18 歳未満・21 人・8 週間)と Chen らの試験(24 人・6 週間)が、柔道に特有の体力テストで、筋トレなどを足した群が伸びたと報告しています(筋トレなしの群と比べて技そのものの出来を測った研究ではありません)
- 器具を使わない「自重だけ」の筋トレを、器具を使うトレーニングと比べた柔道選手の研究も、見つかりませんでした。ジャンプ系や体幹のトレーニングには自重の運動も含まれますが、要旨からは内容を区別できません
- 若い選手については注意が要ります。12〜17 歳の柔道選手 23 人を 10 か月追った研究(da Silva Athayde ら、2026 年)では、体力の伸びの多くは成長(体の成熟)によるものでした。子どもの柔道の練習で筋力などが伸びたという系統的レビュー(Kowalczyk ら、2025 年)もありますが、観察研究が中心です。若い選手で体力が伸びても、それをすべてトレーニングの効果とは言えません
ですから、「筋トレをしない柔道家は弱い」とも、「柔道は練習だけで十分」とも、研究からは言えません。言えるのは、筋トレで柔道の土台となる体力(筋力・パワー・バランス)は伸ばせる。ただし、それが試合の強さにどこまでつながるかは、まだ確かめられていない、ということです。
ケガは防げるか
柔道の試合中のケガをまとめた系統的レビュー(Mooren ら、2023 年・25 研究)では、ケガの部位は頭がもっとも多く、手・膝・肘・肩が続き、種類は捻挫がもっとも多いと報告されています。
では、トレーニングでケガは減らせるのでしょうか。
- 趣味で柔道をする選手 269 人を対象に、柔道向けのケガ予防のウォームアップを道場ごとに割り振って試した試験(von Gerhardt ら、2023 年)では、ケガの割合は予防プログラムの群 23%・対照群 28% で、偶然とは言いにくい差(有意な差)はありませんでした(重いケガにも差なし)。ただし差の推定の幅は広く、効果がないとも言い切れません
- 成人の柔道選手の受け身の動きを調べた研究をまとめた系統的レビュー(Lockhart ら、2022 年)は、受け身は頭や首のケガを防ぐうえで欠かせないとしつつ、首の筋力が強いほど受け身がうまいという関係は弱い、としています
筋トレそのもので柔道のケガが減るかを確かめた研究は、今回は見つかりませんでした。柔道以外も含むスポーツ全体では、筋力トレーニングでケガが減ったというメタ解析があります(Lauersen ら、2018 年・12〜40 歳・6 研究)が、柔道でも同じかは確かめられていません。頭や首のケガを防ぐうえでは、受け身を正しく身につけることが欠かせません。筋トレは、その代わりにはなりません。
筋トレを取り入れるときの考え方
ここからは、研究の結果を踏まえた、この記事としての整理です(研究が直接この組み方を示したわけではありません)。
- 柔道の練習が主、筋トレは土台づくり。筋トレの疲れで、受け身や技の練習の質を落とさない
- 何を伸ばしたいかを決めてから選ぶ。筋力・パワー・体幹・バランスで、効くトレーニングは違う
- 体重や階級に関わる増量・減量は、筋トレとは別に、指導者と相談する
- 成長期の選手は、伸びた分をすべてトレーニングの成果と考えない
- 週に何回やるかは、「筋トレは週何回やればいいか」で整理しています
FitSync の柔道レッスンと S&C のご案内
FitSync は、東京で柔道のプライベートレッスンを1対1で提供するパーソナルジムです。新宿南口 (代々木) GYMと出張レッスンで対応し、レッスンはすべて完全予約制です。
対象は、柔道をこれから始める初心者の方と、基本を1対1で確認したい方。大きな投げ技や強い投げ、勢いのある受け身は行わず、受け身・崩し・組み方・固め技の基礎を中心に進めます。グループクラスではなく、完全個室で行うトレーナーとマンツーマンのプライベートレッスンです。担当はレヴェンテ・ホルヴァート(柔道歴 20 年・初段・競技歴 10 年)。レッスンは英語と簡単な日本語で行います。東京在住の外国人の方や、旅行・出張で東京に滞在中の方にもご利用いただけます。
※大きな投げ技・強い投げ、勢いのある受け身、乱取りは行いません。
トレーナー
レヴェンテ・ホルヴァート(Levente Horváth)/パーソナルトレーナー/ストレングス&コンディショニングコーチ
約10年のコーチング経験を持つ、筋力トレーニング・コンディショニング・ファンクショナルフィットネス専門のトレーナー。柔道初段・ボディビル・CrossFitの競技経験を指導に活かしています。セッションは英語と簡単な日本語で行います。
※医療行為・治療・リハビリテーションは行っておりません。持病のある方・妊娠中の方・医師から運動を制限されている方は、事前にかかりつけ医にご相談ください。
まとめ
- 筋力は柔道の競技レベルと関係する。ただし代表を争うレベルの選手どうしでは差が出にくく、体重あたりの筋力は国際レベルと国内レベルで差がなかった
- 格闘技の選手の研究では、筋力トレーニングで筋力・パワー・バランスが伸びた(パワーが増えなかった研究もある)
- 筋トレで試合の成績や技の出来が変わるかは、まだ確かめられていない。柔道に特有の体力テストが伸びた小規模な試験はある
- 筋トレで柔道のケガが減るかは未確認。頭や首のケガを防ぐうえでは受け身が欠かせない
- 筋トレは柔道の練習の代わりではなく、土台づくりとして取り入れる
本記事は一般的な情報で、医療上の助言ではありません。痛みや持病のある方は、トレーニングを始める前に医師にご相談ください。
参考文献
- Franchini E, Del Vecchio FB, Matsushigue KA, et al. Physiological profiles of elite judo athletes. Sports Med. 2011;41(2):147-66. PubMed 21244106
- Campos BT, Abad CCC, Macedo Penna E, et al. Reference Values for Maximal Strength in Elite Judo Athletes: National- and International-Level Competitors. Res Q Exerc Sport. 2026 (online ahead of print). PubMed 41996598
- Cid-Calfucura I, Herrera-Valenzuela T, Franchini E, et al. Effects of Strength Training on Physical Fitness of Olympic Combat Sports Athletes: A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2023;20(4). PubMed 36834211
- Ojeda-Aravena A, Herrera-Valenzuela T, Valdés-Badilla P, et al. A Systematic Review with Meta-Analysis on the Effects of Plyometric-Jump Training on the Physical Fitness of Combat Sport Athletes. Sports (Basel). 2023;11(2). PubMed 36828318
- Nakatani M, Takai Y, Kanehisa H. Resistance training leading to repetition failure increases muscle strength and size, but not power-generation capacity in judo athletes. PLoS One. 2024;19(8):e0307841. PubMed 39197005
- Stanković N, Stupar D, Ignjatović A, et al. Stable or Unstable? Evaluating the Strength Outcomes of 12-Week Resistance Training in Youth Judo Athletes. Sports (Basel). 2024;12(12). PubMed 39728892
- Marotta N, Lopresti E, Longo UG, et al. Role of Core Training in Judo Athletes: A Systematic Review. J Clin Med. 2026;15(5). PubMed 41827315
- Weldon A, Cloak R, Kirk C, et al. Strength and Conditioning (S&C) Practices of Judo Athletes and S&C Coaches: A Survey-Based Investigation. J Strength Cond Res. 2024;38(4):e160-e173. PubMed 38513184
- da Silva Athayde MS, Lima Kons R, Franchini E, et al. Longitudinal development and physical performance in young judo athletes: The influence of maturation and training. J Sports Sci. 2026;44(17-18):2392-2403. PubMed 41084850
- Mooren J, von Gerhardt AL, Hendriks ITJ, et al. Epidemiology of Injuries during Judo Tournaments. Transl Sports Med. 2023;2023:2713614. PubMed 38654918
- von Gerhardt AL, Reurink G, Kerkhoffs GMMJ, et al. Effectiveness of a judo-specific injury prevention programme: a randomised controlled trial in recreational judo athletes. Br J Sports Med. 2023;57(8):450-456. PubMed 36717214
- Lockhart R, Błach W, Angioi M, et al. A Systematic Review on the Biomechanics of Breakfall Technique (Ukemi) in Relation to Injury in Judo within the Adult Judoka Population. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(7). PubMed 35409940
- Chen Y, Li C, Peng M, et al. Unveiling Optimal Order of Power-Based Resistance and Short Sprint Interval Training in Maximizing Lower-Extremity Physical Fitness Attributes of Judo Athletes. J Sports Sci Med. 2026;25(1):138-148. PubMed 41710439
- Kowalczyk M, Zgorzalewicz-Stachowiak M, Błach W, et al. Does Judo Training Contribute to the Motor Development of Children and Adolescents? A Systematic Review. J Clin Med. 2025;14(7). PubMed 40217888
- Lauersen JB, Andersen TE, Andersen LB. Strength training as superior, dose-dependent and safe prevention of acute and overuse sports injuries: a systematic review, qualitative analysis and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018;52(24):1557-1563. PubMed 30131332
- Branco BHM, Marcondes VA, de Paula Ramos S, et al. Effects of Supplementary Strength Program on Generic and Specific Physical Fitness in Cadet Judo Athletes. J Strength Cond Res. 2022;36(10):2816-2823. PubMed 36135031

コメント